​痛覚

現在、非常に多くの国民が何らかの痛みを日常的に抱えて生活しています。

厚生労働省が実施した平成28年国民生活基礎調査では、自覚症状の状況で男女共に第1位と2位が腰痛と肩こりです。新しい医療で平均寿命は延びました。

しかし、長引く痛みは生活の質を低下させるため、平均寿命と健康寿命との間に大きな差が生まれています。

不必要な痛みがない生活は誰しもが望むことですが、現在、十分なペインコントロールを実現する治療法は確立されていません。また、慢性的な痛みはうつ病や不眠などにもつながり、また近年ではがんや認知症、そして寿命など、人間の健康すべてに関わることもわかってきました。さらに、未曽有の少子高齢化が進んでいる我が国においては、労働年代での慢性疼痛は深刻で、その経済損出は約4.5兆円にものぼるとも試算されています。

 

外界から痛覚刺激は、感覚神経末端で受容された後、その神経の興奮を介して脊髄と脳に伝わり、「痛み」となります。これまでの基礎研究の成果から、長引く痛みはそのような痛覚信号が持続的に起こっているという単純なものではなく、病気によって感覚神経や脊髄、脳で様々な変化が起こり、それらが原因であろうということが分かってきました。

その結果、痛覚信号が不必要に強められたり、またあるときは、通常痛みを

起こさないような軽い信号(服が肌に触れたときの刺激など)でも痛覚信号に変わってしまいます。さらに、神経細胞だけでなく、その周りに数多く存在するグリア細胞も重要な働きしていることが示されています。また、痛みの増悪や遷延化には、社会的および心理的要因も深く関与しています。すなわち、慢性疼痛の理解には、生物医学的研究に加え、心理学や社会学など幅広い分野の研究者の垣根を超えた連携が、そしてその治療においても工学や情報学なども含めた多面的・集学的アプローチが必要とされています。

 

このWGでは、痛みから解放された豊かで幸せな生活の実現に資する、

慢性疼痛の理解と治療・予防法の開発を目指した活動を進めていきます。

© 2020 by Consortium for Sensing Science

​感覚研究コンソーシアム